小児科とーちゃんの日常

小児科、育児、日常、ポイ活についてのブログです。

ウイルスと細菌

今回は主にウイルスと細菌の違いについて述べていきます

 

風邪の話はこちら

syounika-toutyan.hatenablog.com

 

 

感染症の種類

 

大きい順から①寄生虫②真菌③細菌④ウイルスとなっています

 

寄生虫アニサキスエキノコックス、住血吸虫など

衛生環境が整っていなかった頃は多く見られました。今の日本ではだいぶ減りました
IgEという抗体は元々は寄生虫に対しての防御機構ですが、寄生虫が減ったために余ってしまい、花粉症などアレルギーの原因となっています。

②真菌:アスペルギルス、クリプトコッカス、カンジダ酵母など

いわゆるカビです。健康な人が環境中のカビから感染することは稀ですが、免疫力が低下した状態では感染することがあります。抗真菌薬で治療します。
キノコもこの一種ですが、食用キノコは安全ですので感染する心配はありません。

 

③細菌:溶連菌、肺炎球菌、マイコプラズマ大腸菌など

 

良い菌も悪い菌もいます。体の中にはとても多くの細菌がおり、バランスを保っています。抗菌薬(抗生物質)で治療します。

 

④ウイルス:インフルエンザ、水痘、コロナウイルスなど

 

抗ウイルス薬で治療します。

自分で増殖することができないので、①-③と違い生物とはみなされません

 

ウイルスと細菌の違い

 

寄生虫と真菌は通常健康な人では問題になりません。
(例外としてアニサキスなどはありますが)

 

我々が日常遭遇する感染症の多くのはウイルスと細菌です

しかし、その二つは性質が異なります

 

症状の違い

どちらも発熱しますが、細菌は局所的、ウイルスは全身に症状が及ぶことが多いです

例) 溶連菌は基本は咽頭のみで咳や鼻水は目立たない
   一方でインフルエンザは上気道症状に加えて腰痛や頭痛など多岐に渡る
  (溶連菌でも発疹や2-3週間後に血尿を認めることもありますが)

 

検査の違い

血液検査

白血球(WBC)やCRPといった炎症反応は細菌で上昇しやすいです

ただし、細菌感染でも炎症反応が低かったり、ウイルス感染でも炎症反応が上昇することがあるので絶対的なものではありません。その傾向が強いというだけです。

 

髄液検査

背骨と背骨の間に針を刺して、髄液というものを調べます。
細菌感染では多核球という細胞が、ウイルス感染では単核球という細胞が上昇します。勿論この違いは知らなくても良いですが、違うものが上昇するので区別できます。

 

尿検査

ウイルス感染に対してはあまり有効な指標はありません。
細菌感染の場合、尿中に白血球や細菌が増えていないかを確かめます。

 

治療法

ウイルスに対しては抗ウイルス薬を、細菌に対しては抗菌薬を使用します。

以前の記事で書きましたが、いわゆる風邪はウイルス感染症が殆どなので、風邪に対して抗菌薬は効きません

 

抗ウイルス薬にはタミフルやアシクロビルなどありますが、細菌感染には効きません

 

抗菌薬の使い方

細菌感染に対して使用しますが、色々な種類があります

抗菌薬の種類によって、ターゲットとする菌が違いますので使い分けています

例えば、溶連菌にはペニシリン系をマイコプラズマにはマクロライド系を使用します

 

抗菌薬の副作用

抗菌薬の効果は素晴らしいですが、デメリットもあります

①腸内細菌叢が乱れる

人間の腸内には元々様々な細菌がいます。
食生活などによっても変化しますが、抗菌薬によって善玉菌を殺してしまい、下痢になったりします。抗菌薬を処方された際に、整腸薬を処方されることがありますが、市販のビオフェルミン®とは異なり、抗菌薬に強い善玉菌を含んでいます。

また、腸内細菌叢はアレルギーと関与しているともいわれており、この乱れによってアレルギーが悪化することがあるかもしれません。
現在、腸内細菌の分野で様々な研究がなされています。

 

②耐性菌が出現する

抗菌薬を使用することによって、菌によっては最初は効いていたのにしばらくしてその薬が効かなくなることがあります。これを耐性化といいます。

耐性化のデメリットとしては下記の二点があります

a)その人自身に薬が効きにくくなる→使える抗菌薬の種類が減る

b)周りの人に耐性化した菌をうつしてしまう
→菌への抵抗力は人それぞれなので、本人は症状が無くても他の人は重症化することも

 

抗菌薬の適正使用

これはもっぱら医者側が気にしなければいけないことですが、上記の副作用を防ぐためにも抗菌薬をきちんと使うことが必要です。

 

患者さんへのお願いとしては

処方された抗菌薬はしっかりと飲みきる
→熱が下がったからといって、自己判断で中止すると耐性菌が増える可能性があります

不要な抗菌薬の処方を医者に依頼しない
抗菌薬を予防的に使うことは殆どありません(あるにはありますが)

別の病院では風邪で抗菌薬を処方されたのに、何故この病院では出さないんだ!と感じることがあるかもしれませんが、前述のとおり溶連菌感染などを除いて風邪には抗菌薬は効きません。

 

終わりに

風邪に対しては特効薬はありません。残念ながら早く医者にかかったからといって、早く治るわけではありません。休養と栄養を十分に取りましょう。

普段と明らかに症状が違う場合、数日たっても症状が全く改善しない場合は病院を受診するようにしてください。

また、風邪薬は症状が落ち着けば途中でやめても構いませんが、抗菌薬は処方された分はしっかりと飲み切るようにしましょう。