予防接種について
今日は予防接種(ワクチン)について述べていきます
殆どの医師はそうだと思いますが、基本的に予防接種は推奨します
コロナは他の予防接種に比べればわかっていないことが多いですが、イスラエルなどのデータをみれば有効ではないかと考えます
今回は新型コロナワクチン以外の話です
予防接種で防げる病気
私が子供の頃と比べて、予防接種の種類がだいぶ増えました
現代の親御さん方は、こんなに種類が多いのかと驚かれることかと思います
注射をされた痛みで泣く我が子を見るのは親としては辛いですが、将来病気にかからない為にも娘には頑張ってもらいました。(自分で娘に接種したものもあります)
予防接種の分類
上の画像にありますが、予防接種には色々な分け方があります
定期接種と任意接種
定期接種は無料で打てますが、任意接種は数千円~万単位でお金がかかります
日本は予防接種の導入に慎重ですので、海外よりも導入が遅いです
予防接種において日本の常識は世界の非常識とまで言われることもあるようです
また、国内に入ってきても初期は任意接種となり、接種に費用負担があります
とはいえ日本でも定期接種は増えてきており、状況はだいぶ改善されてきています
直近では、ロタウイルスが2020年10月に定期接種化されました!
まだ任意接種な①おたふくかぜ(ムンプス)②インフルエンザ③髄膜炎菌も早く定期接種になってほしいものです
ちなみにアメリカのスケジュールです
生ワクチンと不活化ワクチン(トキソイド含む)
生ワクチン:菌やウイルスの毒性を極力抑えて、ごく弱めた上で免疫を反応させます
病原菌が生きており、極稀に感染するリスクがあります
妊婦の方、重症免疫不全の患者さんなどでは接種できません
他の予防接種をする場合は4週間以上あける必要があります(同時接種除く)
※ただし、生ワクチンでも経口摂取(ロタなど)は間隔をあけなくて良いようです
不活化ワクチン:病原菌を殺して成分を抽出したものです
感染するリスクはありません
生ワクチンよりも免疫がつきにくいため、接種回数が多くなりがちです
以前は他の予防接種をするには接種後一週間あける必要がありましたが、
海外にならって間隔をあける必要がなくなりました
(同じ種類のものを打つ場合は、規定通りの日数をあける必要があります)
トキソイド:毒素を抽出したものです。広義では不活化ワクチンの一種です
メリットとデメリット
メリット
①感染を防げること、もしくは感染しても軽症で済むこと
②重症免疫不全など予防接種ができない人も感染から守ることができる
(後でまた説明します)
デメリット
①予防接種による副反応
接種当日の発熱や水疱瘡などであれば2週間程度で発疹が出ることも
②任意接種の場合は費用負担が発生する
③予防接種をしても免疫がつかないことがある
さて、メリットの②であげたものですが、所謂集団免疫というものです
大多数が免疫を持つことによって、その疾患が流行しなくなる
→免疫がない人を感染から守ることができる
生まれながらに免疫力がない人、抗がん剤などの化学療法で免疫不全の人、予防接種をしても免疫がつかない人などを守ることができます
What is herd immunity and how many people need to be vaccinated to protect a community? より引用
ちなみに、アメリカではアレルギーや免疫不全など以外の理由で予防接種をしていない場合、公立の学校に通うことはできない州が多いです
予防接種をしないことは他の生徒を危険にさらすことと認識されているようです
集団免疫(herd immyunity)は先天性風疹症候群の予防効果などもあります
以下は私の個人的な話になります
私たち夫婦は妊活の前にMRワクチン(麻疹と風疹です)を接種しました
(妊娠を希望する女性およびその配偶者で抗体が十分でないな方は、風しんワクチン接種費用の補助があると思いますので、各自治体のホームページを参照してください )
しかし、妻は妊娠初期の検査で風疹の交代価は上昇しておらず、免疫はついていませんでした
そのため、妊娠中期までは極力外出を控え、不安な日々を過ごしていました
結果として娘の妊娠中に風疹にはかからなかったから良かったものの、妊娠初期に罹患してしまった場合は色々な障害を持った子が生まれてくることになります。
コウノドリの4巻に風疹のお話が載っています
妊娠を考えている方だけでなく、多くの人が予防接種をすることによってこれから生まれてくる子供たちを守ることができます
予防接種の打ち方
スケジュールはかかりつけの先生に相談しましょう
基本的には同時接種がおすすめです
→一本ずつ打つことも可能ですが、通院日が増えますし、結果的に免疫を獲得する年齢が後ろにずれこんでしまうのでリスクが増えます
これまで日本の打ち方は皮下注射がメインでしたが、海外においては生ワクチンを除く多くのワクチンは、原則筋肉内接種で行われています
その理由は、筋肉内接種が皮下接種に比べ、局所反応が少なく、免疫原性は同等かそれ以上であることが知られているからです
ワクチンのそれぞれ
暴露後に接種することによって発症を防げるもの
狂犬病:発症してしまうと致死率100%です
海外で動物(犬に限りません)にかまれた際には必ず接種しましょう
水痘(水疱瘡):曝露後72時間以内であれば効果が期待できる
(120時間以内であれば症状を軽減できる)
麻疹(はしか):接触から72時間以内のワクチン接種
(あるいは4日以上6日以内のガンマグロブリンの筋肉注射)
海外渡航する際に必要なワクチン
海外に渡航する場合は、その国によって求められるワクチンがあるので確認が必要です
地域によって流行している病気が違いますからね
日本は島国なので、狂犬病は撲滅できており、予防接種の必要はありません
(飼い犬は接種義務がありますが)
2020年に一例報告があったようですが、海外で犬にかまれた男性のようです
逆にアメリカでは接種されていないものとしてBCG(結核)、日本脳炎などがあります
向こうでは結核が0なわけではないですが、かなり少ないようです
現在日本では任意接種なワクチン
①ムンプス(おたふくかぜ)
たいていの人は唾液腺が腫れるだけですが、
難聴や思春期以降では不妊などの合併症があります
任意接種ではありますが、ぜひ接種してほしいです
(というか、国はさっさと定期接種に戻すべきでしょう)
一人だけですが、実際に片側難聴になってしまった子供を診察したことがあります
(残念ながら、難聴を発症してしまうと現代医学では治せません)
②インフルエンザ
発症予防は60%程度ですが、重症化を予防する効果があります
毎年のことなので金銭的にも負担がありますが、こちらも接種が望ましいです
③髄膜炎菌
アメリカでは年間1000人程度発症らしいですが、日本では年間20人未満
上二つに比べると優先順位は下がると思います
ただし、寮生活などをされる方はリスクが高く、接種を推奨されているようです
④HPV(子宮頸がん)
現在定期接種に分類されていますが、事実上任意接種です
世界的に見ても、先進国では明らかに日本だけ接種が遅れています
日本産婦人科学会のホームページに詳しく記載されています
慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されていません。
また平成28年12月に厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査の結果が報告され、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12〜18歳女子では10万人あたり20.4人)存在すること、すなわち、「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではないことが示されました。
要約すると、症状はワクチンに関連したものではなく、思春期特有のものが残念ながらたまたまワクチン接種後に発症してしまったということだと思われます
我が子が苦しんでいる現状、どこかにわかりやすい原因を求めたくなる親心は十分理解できます。どうしてワクチンを接種させてしまったのかと自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
しかし、親御さんは何も悪くありません
むしろ、我が子が将来子宮頸癌になるリスクを減らしたのです
子供がこれから子宮頸癌のワクチンを接種する年齢の親御さんの中には、
副作用があって接種させたくないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、
お子さんの将来のことを考え、接種いただければと思います。
終わりに
世の中に反ワクチンの方などもいらっしゃいますが、子供への愛情が無くてそうしているわけではないでしょう。むしろ、子供が健やかに育ってほしいからその選択をされた方が殆どだと思われます。
しかし、これまでの人類の歴史や世界的な実績を見ると、残念ながら予防接種を受けないことのデメリットはメリットよりも明らかに大きいと言わざるをえません。
是非、予防接種を受けていただければと思います。
なお、予防接種を定期の年齢で受け損ねた場合なども、猶予期間があったり自費であれば接種可能だったりしますので、かかりつけ医までご相談ください。